早田課長は爽やかイケメンタイプで、仕事もできてまわりからの信頼も厚い。とりわけ女性に人気らしいが、男の俺にはその魅力はよくわからない。なんでも、結婚しているのに色気溢れていて、落ち着いた佇まいがいいのだとか。
案の定、近田さんが黄色い声を上げている。
朱宮さんは……いつもどおりニコニコしている。
まあ、俺には無縁の世界だな、と息を吐いたところでふいに名前を呼ばれてそちらを見る。
「大野、ちょっとこっちこい」
早田課長が手招きするので「はい」と立ち上がった。
「おっ、突破口!」
いや、違うだろ。ツッコむ気にもなれずとりあえず目で牽制しておく。(先輩だけど)
なぜ呼ばれたのか分からないままそちらへ行くと、全員の視線がこちらへ向いた。……ような気がした。
「大野、もう少し愛想よくできない?」
……いったい何の話だ。そんなに俺、愛想ないかな? そうでもないだろうと彼女たちを見回すと、早田課長に同意の目。
「……すみません。これでも愛想よくしているつもりです。結構気をつかっていますよ」
いや、本当に。気をつかってるつもりだけどな。早田さんが愛想よすぎなんじゃないだろうか。
「えっと、何か飲む?」
朱宮さんが聞いてくれたので、あたりさわりもなくビールをいただいた。
「はい、どうぞ」
「どうも」
トクトクと注がれるビール。注ぎ終わると、朱宮さんはニッコリと笑った。